欧州連合(EU)とは? 主な仕組みと組織構成【第2回】

目次
2. EUの主な仕組みと組織構成
ヨーロッパ連合(EU)は、ただの仲良しクラブではない。
実際には、びっくりするほど複雑な仕組みと組織の上に成り立っている。小学生の学級会よりもルールが多いし、誰が偉いのかもよくわからないし、参加してる国々もたまに「オレ知らねぇ」とか言い出す。そんな混沌の中でも、それなりに運営できているから、まあ偉いっちゃ偉い。
ここでは、EUを支える主要な組織とその役割について、解説していこう。
2-1. 欧州議会・欧州委員会・欧州理事会の役割
EUの組織は、ざっくり言うと「三本の矢」みたいなものだ(安倍元首相とは関係ない)。この三本、つまり欧州議会・欧州委員会・欧州理事会が、それぞれ独自に、しかし互いに絡み合いながらEUを動かしている。
- 欧州議会(European Parliament)
市民の代表機関。EU加盟国の市民たちが選挙で議員を選び、法律の審議・修正・可決を行う。言ってみれば「EU版・国会」みたいな存在だ。ただし、EU法案の提出権はない。要するに、決まったテーマについて「これダメ!」「これイケる!」って言うだけ。先生が決めた議題に対して、”賛成か反対か”を多数決で決める生徒みたいなもの。 - 欧州委員会(European Commission)
EUの実行部隊。加盟国から選ばれた委員たちで構成され、「EUの利益」を最優先にして動く。法律案を作るのはコイツらの仕事。要するに「先生役」。ただし、「全員のためを思ってやってます」って顔しながら、時々自国の利益もチラ見してる。 - 欧州理事会(European Council)
加盟国の首脳(大統領とか首相とか)が集まるトップ会議。重要な方針を決める最終ボスたち。ここで「いやウチは無理だわ」「それなら話聞くけど」みたいなヤンキー交渉が行われる。政策の方向性はここで決まり、あとは下の組織の欧州委員会や欧州議会が涙目で実行に移す。
この三つがそれぞれ牽制し合いながら動いている。普通の組織なら絶対に破綻するバランスだけど、そこはヨーロッパ、文句言いながらもなんだかんだで続けている。
2-2. 単一市場と共通通貨ユーロの運用
EUの最大の売りポイントの一つが単一市場(Single Market)だ。
これは、「ヒト・モノ・カネ・サービスの自由移動を保障する」ってやつで、簡単に言うと、「EU圏内なら税関もなく、どこでもビジネスできるし、どこにでも働きに行ける」みたいな夢の国モード。
イタリア人が突然ベルギーでワッフル職人になりたいと思っても、基本的には何の許可もいらない(もちろん、現実には言語の壁とかで詰むけどな!)。
さらに、1999年から導入された共通通貨ユーロ(€)は、単一市場のスムーズな運用を助けている。現在19か国(ユーロ圏)が採用しており、為替リスクとか通貨交換手数料みたいな面倒くさい問題が消えた(消えなかった問題もある)。
ただし、ユーロを採用してない国(例:デンマーク、スウェーデン)もある。「みんなで仲良く!」とか言っておきながら、財布だけは別にしたがるあたりが、ヨーロッパの微妙な友情レベルを物語っている。
2-3. 加盟国間の法律・政策調整の仕組み
EU加盟国は、自国の法律を完全に好き勝手に変えられるわけではない。
EUレベルで決まったルール(指令とか規則とか)は、各国に適用されるし、国内法と調整する義務がある。つまり、めちゃめちゃ面倒くさい。
例えば、「○○業界では環境基準をこうしなさい」とEUが決めたら、加盟国はその通り国内の法律を改正するか、新しく作り直さなきゃいけない。すごく嫌そうな顔をしながら。
このプロセスには、主に次の段階がある。
- EU指令(Directive)
「こういう結果を出せよ」という指示。どうやってやるかは各国に任される。つまり、「宿題やれよ。ただし、やり方は自由」と言われるパターン。 - EU規則(Regulation)
直ちに全加盟国で強制適用。つまり、「これ今日からやれ。いいからやれ」という命令形態。 - 欧州司法裁判所(ECJ)
加盟国がサボったり逆らったりすると、ここに訴えられる。言うなれば、宿題忘れたら即説教部屋送りみたいなものである。
こんな感じで、EU内では絶妙なバランスで「国家の自主性」と「超国家的なルール作り」がせめぎ合っている。常に「俺ら独立国だし!」vs「いやいや一緒にやらなきゃ!」のデスマッチが繰り広げられているわけだ。
【第2回】総括:EUの組織は「三すくみ」で出来ている
EUの中身は、ざっくり言えば「混乱しつつもまあ機能している制度の塊」である。主要組織は三つ。市民代表の欧州議会、政策の実行者欧州委員会、そして各国首脳による欧州理事会。それぞれが三すくみ的に監視し合いながら、絶妙なバランスでEUを動かしている。
さらにEUのもう一つの目玉、「単一市場」と「ユーロ」は、加盟国間の取引をスムーズにし、経済的な一体感を作り出している。ただしユーロは全加盟国に強制ではなく、「財布だけ別々」な国々も多く、そこにはヨーロッパらしい「半信半疑な協調性」が滲んでいる。
また、EU法の導入は加盟国に義務付けられており、各国は「めんどくせぇ」とか思いながらも、泣く泣く国内法と調整している。その過程における摩擦や駆け引きも、EUというプロジェクトの“醍醐味”とも言える。
参考書籍・サイト:
本音化するヨーロッパ 裏切られた統合の理想 (幻冬舎新書) 三好範英 (著)
ユーロ危機とギリシャ反乱 (岩波新書) 田中 素香 (著)
ヨーロッパ統合史 名古屋大学出版会
欧州委員会(European Commission)公式サイト