アメリカ合衆国とは? 経済発展と国際的影響力【第3回】

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目次

アメリカ合衆国とは? 政治体制と社会構造【第2回】

アメリカ合衆国とは? 政治体制と社会構造【第2回】

【第2回】では、「政治体制と社会構造」に焦点を当てて、アメリカという“ややこしい巨大国家”の仕組みを深掘りしていきます。

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はじめに

アメリカ合衆国が、単なる一国家にとどまらず、世界経済や国際秩序に多大な影響を与える“超大国”となった背景には、並外れた経済発展と圧倒的な国際的プレゼンスがある。

本章では、産業革命以降の経済成長、テクノロジーとイノベーションの主導、ドル基軸通貨体制の構築、軍事力の展開、そして映画・音楽・ファッションといった文化輸出に至るまで――アメリカがいかにして「世界のテンプレート」を作ってきたかをひも解いていく。

その成長は必ずしも美しい一本道ではなく、時に他国の反感や犠牲を伴いながら進んできた。だが、それでもアメリカは前へ進む。全速力で、時にブレーキのないショッピングカートのように。

現代世界のしくみを理解するうえで、「アメリカ経済とその影響力」を抜きに語ることはできない。その全体像に、ここでしっかりと向き合っておこう。

1. アメリカの経済発展と国際的影響力

アメリカ合衆国は、20世紀以降、世界経済を牽引する絶対王者的な存在になった。製造業、サービス業、金融、テクノロジーと、あらゆる産業を片っ端から牛耳り、気づけば世界中に影響を与える存在となった。しかも、経済だけでなく軍事力、文化力でも遠慮なくマウントを取りに来る。控えめという概念を辞書から削除したような国である。

その成長過程は、イノベーション、金融覇権、軍事拡張、そして文化輸出という、手段を選ばない総力戦だった。成功の裏には無数の犠牲や矛盾も存在するが、そんなものをいちいち気にしていたら世界一になんてなれない、というのがアメリカ流だ。
シンプルに言うと、「圧倒的だが雑」なのである。

1-1. イノベーションとテクノロジー産業のリーダーシップ

アメリカは、イノベーションの国である。産業革命以降、鉄道、自動車、航空機、インターネット、AIと、次から次へと時代を動かす技術を生み出してきた。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクといった、「カリスマ」という言葉を免罪符のように振り回す人種もここから量産された。

シリコンバレー1は、テクノロジーと金と野望と胡散臭さが入り乱れる魔窟であり、ここからGoogle、Apple、Facebook、Amazon、Teslaといった世界を引っ掻き回す企業が次々と誕生した。世界中の頭脳が集まり、ひたすら「世界を変える」ことを競い合った。その結果、便利さは爆発的に進化したが、同時にいろいろ壊れた。

特に、スマートフォンという魔法の板を生み出してしまったのは衝撃的である。iPhoneの登場により、現代人はいつでもどこでもインターネットにアクセスできるようになった。結果、世界中で「スマホ依存症」が爆誕。レストランでも電車でも、みんなが画面をタップしながら無言で存在しているという、無音映画みたいな光景が日常になった。
情報へのアクセスは劇的に向上したが、人間関係と集中力と精神衛生はだいたい悪化した。進歩とは、常に痛みを伴うらしい。

それでも、テクノロジー産業を通じて、アメリカは情報、通信、ライフスタイルに至るまで世界のスタンダードを作り続けてきた。もはや、「生活の中からアメリカ製のものを引き算したら、ただの原始時代に戻る」と言っても過言ではない。いや、むしろ過言であってほしいが、たぶん無理である。

1-2. ドル基軸通貨と世界経済への影響

アメリカ経済のもう一つの最強武器は「ドル」である。第二次世界大戦後、ブレトンウッズ体制2によって米ドルは国際通貨の中心となった。金とドルを結びつけた固定相場制(今は終わったが)を経て、ドルは「世界の共通言語」みたいなものになった。

このドル基軸体制のおかげで、アメリカは無限に赤字を垂れ流しても国家が破綻しないという、バグみたいな特権を手に入れた。すごい。
世界中がドルを欲しがるため、アメリカの金融政策一つで他国の経済が振り回されることもしばしばである。言ってしまえば、「アメリカがくしゃみすれば世界が風邪をひく」みたいなものだ。

ただし、最近は中国の台頭やデジタル通貨の普及により、ドル支配に陰りが見えるとの指摘もある。だが、現状ではまだドルは絶対王者であり、「米国債を買わされる地球人たち」の構図は続いている。

1-3. 国際安全保障と軍事力の役割

アメリカの国際的影響力の大部分は、ぶっちゃけ軍事力によるものである。世界最大の軍事予算を持ち、海外に数百の基地を展開している。世界の警察どころか、もはや世界の大家さんみたいな存在だ。しかも大家はめちゃくちゃ武装している。

NATO3のリーダーシップ、対テロ戦争、中東介入、アジア太平洋戦略――ありとあらゆる分野でアメリカは軍事的プレゼンスを維持してきた。建前は「自由と民主主義を守るため」だが、実態は「自国の利益と影響力を守るため」である。まあ、人間のやることなんてだいたいそんなもんだ。

核兵器を筆頭に、最新鋭の兵器開発にも余念がない。ドローン戦争、サイバー攻撃対応、宇宙軍創設と、もはや戦い方も未来感満載である。世界中の誰かが戦争を始めれば、たいていアメリカはそこに絡んでいる。悲しいけど、これ現実なのだ。

1-4. 文化輸出(映画・音楽・ファッション)の影響

アメリカが世界に与えた影響で、軍事や経済以上に身近なのが「文化」である。映画、音楽、ファッション、食べ物――これらはアメリカ産のもので世界中が埋め尽くされている。

ハリウッド映画は世界のスクリーンを席巻し、マーベルヒーローたち4がどこの国でも知名度抜群である。音楽ではジャズ、ロック、ヒップホップが次々と生まれ、Spotifyのランキング上位を米国勢が独占していることもしばしばだ。

ファッションでも、ジーンズ、スニーカー、ストリートスタイルなどがグローバルスタンダードになった。要するに、アメリカは「かっこいいもの製造工場」としても成功してしまったわけである。
その裏で、「文化の多様性を奪ってる」という批判もあるが、そんな声をアメリカが気にするわけもなく、今日もマクドナルドとディズニーは胃袋と夢を侵略し続けている。

まとめ:アメリカ合衆国の今後

アメリカ合衆国は、依然として世界に対する巨大な影響力を保持している。経済、軍事、文化、テクノロジー――あらゆる分野で、他国を数周リードする存在である。だが同時に、その内部には深刻な課題も山積している。言ってしまえば、アメリカは「最強だがボロボロ」という矛盾のかたまりである。

国内では、政治的分断がかつてないレベルで拡大している。民主党と共和党の対立は、「意見の違い」ではなく、「世界観そのものが違う」という次元に達している。選挙のたびに国が半分に割れる様子は、もはや様式美に近い。
また、経済格差の拡大も深刻であり、超富裕層とその他大勢の間の距離は、もはや地球と火星くらいに開いている。

国際的には、中国をはじめとする新興国の台頭により、かつての「圧倒的一強」時代は終わりを迎えつつある。アメリカは今、単独覇権から、多極化する世界の中でどう立ち振る舞うかという難題に直面している。
自ら撒き散らしたテクノロジー(AI、SNS、スマホ依存症)や、ドル覇権の揺らぎ、文化輸出によるグローバル疲弊にも、少なからぬ反発が起きている。

それでも、アメリカには底知れない回復力がある。なぜなら、失敗を恥じずに「じゃあ次行こ!」と平然と言える国民性を持っているからだ。反省より行動、計画より実行、言い訳よりドリーム。
ある意味、アメリカ合衆国は「永遠に完成しないプロトタイプ」のような存在である。

今後のアメリカは、国内の分断をどう埋めるか、国際社会におけるリーダーシップをどう再定義するか、そして自らが生み出した技術と社会問題をどう制御するかという、三重苦に向き合うことになるだろう。
正直、難易度は「ラスボス級」だが、それでもアメリカは、笑いながら無謀なチャレンジを続けるに違いない。
それがこの国の、最も呆れられ、同時に最も尊敬される理由である。

未来のアメリカは、相変わらずめちゃくちゃだろう。だが、それでも世界は目を離せない。
なぜなら、彼らはいつだって「世界を変えるか、盛大にコケるか」のどちらかだからである。
――それがアメリカ合衆国の宿命であり、最大の魅力でもある。

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参考:

アメリカ史  上・下 紀平 英作 (編集) 

民衆のアメリカ史 上・下巻 ハワード ジン (著), 猿谷 要 (監修)

アメリカン・デモクラシーの逆説 渡辺 靖 (著)

  1. シリコンバレーは、カリフォルニア州サンフランシスコ湾南部に位置する世界最大のハイテク産業集積地である。
  2. ブレトンウッズ体制とは、1944年に設立された国際経済体制で、米ドルを基軸に為替レートを固定する制度。
  3. NATO(北大西洋条約機構)は、欧米諸国が加盟する集団防衛のための国際軍事同盟である。
  4. マーベルヒーローとは、マーベル・コミック社が生み出したアメコミキャラクター群で、アイアンマン、スパイダーマンなどが代表的。

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