アメリカ合衆国とは? 政治体制と社会構造【第2回】

目次

アメリカ合衆国とは? 概要と歴史【第1回】

アメリカ合衆国とは? 概要と歴史【第1回】

アメリカの政治や社会がなぜこうも複雑なのか。その答えは「歴史」の中にあります。<br /> まだ【第1回】を読んでいない方は、建国から現代までの流れを押さえておくと、制度の背景がグッと理解しやすくなるのでぜひご一読ください。

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はじめに

歴史という土台の上に築かれるのが「制度」と「社会のかたち」である。

アメリカ合衆国は、建国当初から「権力の集中を防ぐこと」「個人の自由を守ること」を至上の価値として掲げてきた。その結果、世界でも特異な政治体制――大統領制と三権分立、そして強固な連邦制を生み出した。

この回では、アメリカ政治の基本構造、主要政党の思想的な違い、そして社会全体が抱える構造的な問題を丁寧に読み解いていく。

理想主義と現実主義が毎回ぶつかり合いながら、それでもギリギリのバランスで成り立っているその姿は、ある意味で民主主義の縮図とも言えるだろう。うまくいってるかは、まあ…読んでから判断してほしい。

1. アメリカの政治体制と社会構造

アメリカ合衆国は、大統領制を採用する連邦共和制国家1である。建国以来、権力の集中を嫌う国民性のもと、「三権分立」を徹底して設計してきた。その結果、行政・立法・司法の三権が互いにけん制し合い、時には足を引っ張り合いながら(いい大人がな)、絶妙なバランスで国家運営を行っている。

また、連邦政府と州政府が並立する「連邦制」も特徴である。アメリカでは州ごとに法律や制度が異なり、どこの国よりも「ここは本当に同じ国なのか?」と疑いたくなるバラバラ感を醸し出している。
移民国家としての多様性は世界でも突出しており、それに伴う社会課題も超特盛である。人種問題、経済格差、宗教対立――全部盛りだ。アメリカ社会は今日も、終わらない自己矛盾と格闘している。

1-1. 大統領制と三権分立の仕組み

アメリカの政治制度は、大統領を国家元首かつ政府の長とする「大統領制」を採用している。議院内閣制とは異なり、大統領と議会はそれぞれ独立して選出されるため、政権と議会が仲良くする義務はない。実際、よくケンカしている。たとえるなら、別居中の夫婦が無理やり一緒にイベント運営している感じだ。

行政権は大統領に、立法権は議会(上院・下院)2に、司法権は最高裁判所を中心とする裁判所に属している。この三権が互いを監視し、チェックし、たまにサボり、あるいは無茶な命令を差し戻したりしながら、ギリギリでバランスを保っている。教科書的には「美しいシステム」であるが、現実には人間のエゴと利害のぶつかり合いが常態化しているため、実際の運用は泥試合であることが多い。

1-2. 主要政党(民主党・共和党)の特徴

アメリカ政治の主役は、民主党(Democratic Party)と共和党(Republican Party)という二大政党3である。たまに「第三勢力が台頭!」とニュースになるが、だいたい消えていくので、基本的にこの二強体制である。

民主党はリベラル寄りで、社会福祉、環境問題、人権尊重を重視する。一方、共和党は保守的で、小さな政府、自由市場、伝統的価値観を重視する。つまり、片方は「みんなで助け合おうぜ!」派、もう片方は「自己責任だろ、甘えんな!」派である。
どちらも時代によって主張の細部は変わるが、基本構造はここ数十年、だいたいこのままだ。

最近では、共和党内でポピュリズム色が強まったり、民主党内で進歩的な左派が台頭したりと、内部での分裂も進んでいる。まとまっていないのに対立しているという、非常に生産性の低い構図が完成している。

1-3. 選挙制度と連邦制の特徴

アメリカの選挙制度は、表向きは「民主主義の見本市」とされているが、実際は驚くほど面倒くさい。大統領選挙は一般投票だけで決まらず、選挙人団(エレクトラル・カレッジ)4によって最終的に勝者が決まる仕組みだ。これにより、得票数で負けた候補が当選するという謎現象が、たまに発生する(どうしてこうなった)。

また、各州が独自に選挙管理を行うため、投票方法やルールが州によってバラバラである。郵便投票、期日前投票、身分証明書の要否など、細かい違いが膨大に存在する。結果として、アメリカの選挙は世界でも屈指のカオスイベントと化している。

連邦制も同様に、州の自治権が非常に強い。医療制度、教育制度、死刑制度まで、州によって考え方や運用がまるで異なる。アメリカを一言でまとめるのが難しい理由は、この「50個のミニ国家の集合体」だからである。

1-4. 移民国家としての多様性と課題

アメリカは「移民の国」として知られる。歴史的にも、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、中南米など、あらゆる地域から移民を受け入れてきた。そのため、文化的な多様性は世界でも圧倒的である。毎日がワールドカップ状態だ。

しかし、その多様性が摩擦を生むのもまた事実である。人種差別、移民排斥運動、宗教対立など、課題は山積みだ。特に経済格差が人種問題と絡み合うことで、社会の分断5はさらに深刻化している。

「自由と平等」を掲げながら、実際には格差と差別を抱える――この矛盾を抱えたまま、アメリカ社会は21世紀を進んでいる。相変わらず理想と現実がねじれたままではあるが、それでも諦めずに「より良い未来」を目指してもがき続けるところに、アメリカの底力があるのかもしれない。たぶん。

まとめ

アメリカの政治体制と社会構造は、自由と分権を重んじた結果、極めて複雑で、時には非効率にも見えるものになっている。

大統領と議会が対立し、州ごとに法律が異なり、社会には多様性と分断が同居する――まるで秩序と混沌が同居する迷路のような国家運営だ。だが、それこそがこの国のリアルであり、ダイナミズムでもある。

次回は、この政治と社会の仕組みが、どのようにして世界に影響を及ぼすほどの「経済力」と「国際的影響力」を生み出してきたのかを探っていく。

派手で矛盾だらけなのに、なぜかリーダーになってしまう――そんなアメリカのもう一つの顔をのぞきに行こう。

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参考:

アメリカ史  上・下 紀平 英作 (編集) 

民衆のアメリカ史 上・下巻 ハワード ジン (著), 猿谷 要 (監修)

アメリカン・デモクラシーの逆説 渡辺 靖 (著)

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